俺のミッション 執筆の目的 その4-3「成事在人」補足とまとめ

 

 こんにちは。はやぶさひろです。

 前回は京信中国のOBである唐と欧陽を戦略的に採用したことを書きました。


 今回は拙著には登場しませんが、もう一人京信OBで採用した人物のこと、そして内部的な成事在人の総括をいたします。。

 京信では高機能製品のプロダクトマネージャー(部長)として活躍していましたが、2006年頃退職し奥様が経営する会社を手伝っていました。のちに京信の代理店にもなり、その責任者をしていました。名前をSHXとしておきましょう。

 2018年まもなく冬になろうかという頃でした。SHXから荻村の携帯に突然ショートメールが飛び込んできました。「私は荻村の役に立つと思うので手伝わせてくれないか?」というものでした。「え、君は奥さんと一緒に会社を経営しているのではないか?」「色々あり、一線を退くつもりだ。詳しくは会って話ししたい」とのことです。

 この頃はとにかく劇的に忙しい時期でした。特別価格を始め多くの不正を疑い決裁権限を総経理に集中していったことが一つです。一日400-500件のメールをさばいていました。決裁関係の意見具申だけで100件のレスポンスが必要でした。

 それに加え同年9月に決行した深セン代理店二社(チュウシュウとキキン)との契約解除、10月深セン営業部長の呉解雇の後始末(顧客の付け替えや係争準備)なども重なり荻村は時間がありませんでした。上海事務所にいる僅かな時間を見つけ、事務所近くの洋食レストランに来てもらいランチをしながら話しを聞きました。

 「妻とは経営方針で毎日意見が食い違い会社では議論ばかりとなる。その延長で家に帰っても喧嘩になる。だったら自分が経営から身を引き、せめて家では穏やかにしたい。私が高度製品に強いことやしっかりマネジメントしてきたことは荻村総経理もよく知っているはずだ。必ず役に立てる」との主張でした。

 前述したようにその頃の荻村は猫の手も借りたい程でしたが、それは信頼できる人間でなければなりません。自分を慕ってくれる人は貴重です。そこで重要なのはポジショニングです。彼にどのような地位や使命を与えるかです。これは本社決裁を仰ぐためにも必須です。

 その年の1月に解雇した上海営業部長徐と共謀していたことが分かり、技術支援部長WWYも続いて解雇しており、そのポジションが空白になっていました。また高機能製品を担当していたマーケターEDも徐と共謀していたことを荻村は疑っていましたが証拠がないので泳がせておりました。

 「空位になっている技術支援部長として、そして今後製品マーケティングを再強化するため製品マーケティング部を新設し兼務部長としてSHXを採用する」という稟議書を発行、認可を得ました。

 最初の期待が実現しました。EDに製品マーケティング部長として、つまり君の上司としてSHXが来ることを告げると、翌日EDから辞表が提出されました。中国人の上司が荻村の仲間なら必ず暴かれることを悟ったのか、追込み策が実行されることを悟ったのでしょう。解雇すると経済補償金が発生しますが自己都合退社の場合、それが不要になります。


 結局、京信から部長級を三名採用しました。唐は荻村がハントしましたが、欧陽とSHXは向こうからアピールしてきました。唐は京信深セン時代荻村の直属の部下でしたが、欧陽とSHXは上海販社所属で直接的な関係はありませんでした。何故彼らが荻村の元で働きたいと言ってきたか?です。

 荻村は京信深セン時代、上海営業統括部長趙・営業部長蒙から不正な攻撃で販売上のダメージを受けましたが決死の努力でその悪事を解明し懲罰委員会での懲戒処分決定まで追い込みました。それは京信中国全社員が知るところです。「こんな日本人駐在員は初めてだ」と驚いたことでしょう。と同時に自身の地位を利用して相当な額を懐に収めていた趙と蒙には正義感か嫉みか分かりませんが、嫌悪感があったはずです。それをやり抜いた日本人に一目置くのは当然と考えられます。

 また荻村は利権を最大限に利用しようとする輩とは真逆で、代理店からの貢ぎ物攻撃にも乗らなかった(卓球接待だけは受けましたが…)、節操のある経費の使い方をしていた、自分の利益や出世が第一ではなく平等かつ公平な評価をしようとしていた、等が多くの中国人社員に響いたのではないかと考えられます。

 日本にも自身の出世が第一で部下を踏み台にする人も多いので、そういう人を見ていると日本の読者も同様にお分かりになると思います。ただ中国はもう少しえげつない理不尽がまかり通っていると感じます。三国志で曹操が一食当たりの食材をけちってコック長に「少なくするように」と命じたら兵の士気が下がりました。そこで曹操はコック長の独断による蛮行とし彼の首を切り落として「これでよいだろう!」と兵の士気を元に戻した、という話しがあります。

 荻村と信頼しあえる元の仲間が直属の部門長に三名いた、というのは改革推進に欠かせません。復習ですが、深セン営業責任者が唐、上海営業責任者が欧陽、技術支援部兼製品マーケティング部責任者がSHXという布陣です。

 内部的に「成事在人(事を成すは人にあり)」が整った、と言えるでしょう。これは一夜では成らず大げさですが17年かけて構築してきたことです。荻村自身も京信深セン時代、京信を辞めたとき、まさか次代コーポに行くとは予想もしていませんでしたが、心の中では「いつか喜びを享受できるかもしれない」と関係性を保ってきたことの成せる技です。

 しかしながらいくら頼ってくれると言っても問題がないという訳ではありません。この三名は日本語ができません。唐とSHXは英語は非常にうまいですが、何語を使ってもよいので直接コミュニケーションが取れないと組織変革の推進は難しくなります。

 例えば、唐をハントし当時の深セン総経理金ワールドに一人放り込んだのですが、「怪しそうな代理店・不正に感じること等、報告するように」と命じておきます。もちろんその理由も話しておかなければなりません。これを通訳を介して行うというのでしょうか?あっという間に情報拡散する危険性があります。また通訳は難しい不正の仕組みとか業界を知り尽くしていないとイメージできないことは正確に通訳できないかもしれません。レベルの至っていない通訳を介すとこちらの言ったことを誤って伝えるので、トンチンカンな回答が来るのですが、それも更に誤って日本語に訳すので「トンチンカン」の二乗位話しが分からなくなるのです。結局諦めざるを得ないのです。

 英語を介す方法もありますが、お互いネイティブでないのでどちらかが弱いと簡単な内容しか伝わりません。そこに気づいた荻村は赴任当初から中国語文法を勉強し単語を当てはめて意思疎通しようと決心するのです。毎週二回の中国語レッスンではかならず書いた日記やコラムをチェックしてもらいました。石の上にも三年と言いますが、毎日書き続けているうちに日本語を書くのと同じ位のスピードで書けるようになってきたのです。もちろんネイティブでないことははっきり分かるとは思いますが、日常と仕事の件なら95%は通じていた自信があるようです。

 日常業務は通訳頼りでよいかもしれませんが、機密事項・難解な内容は直接やり取りしないと、ということが分かっていただいたと思います。

 最終原稿から割愛したことを補足しておきます。唐を深セン責任者候補として採用する時、複数の人材の顔が浮かんだが結局唐が最適だと絞り込んだことは拙著で書きました。それは何故かです。

 唐は出社初日から酷い虐めを受けることになります。四面楚歌という感じですね。人間が一番絶えられないつらい毎日を過ごさないといけません。それに絶えられるのが唐だと確信していたからです。他の人間なら優秀でもすぐに辞職するでしょうね。またその虐めは、荻村の刺客ということはバレバレなので「君は歓迎されていないよ。分かるだろう?早く辞めた方がいいよ」という酔爺之意不在酒(酔っ払いオヤジの意図は酒にあらず)の現れです。今更ながらよく絶えてくれた、と感心しています。


 余談ですが、唐・欧陽・SHXの地位の場合、給与は元の京信なら現レートで100万円(ボーナス別)位に跳ね上がっています。次代では荻村が提示したかなり安い金額で呑んでくれました。彼らは既に上海や深センに複数の不動産を持ち家賃収入だけでも結構な額があるのでしょう。「金ではない。荻村の役に立ちたい」とかっこいいことを言いました。

 しかしながら大手一流企業中国子会社の部長ではありますが月給は100万ですよ。日本で月給100万円の人って何%いるでしょうか?もう逆転されているのです。


 長文お読みいただき、誠にありがとうございました。

 次回は執筆の目的その5を掲載予定です。

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