矛盾だらけの組織制度Ⅱ~在庫量

  前回京信中国コンタクトセンタ(電話相談室)での目標設定の矛盾についてお話ししました。
 今回は次代コーポレーションでの事例をご紹介いたします。

 京信深圳販社担当時もそうだったのですが、当時まだ日本生産品が多く、発注から入荷までの標準納期は3ヶ月かかっていました。
 日本の物流センター在庫は間に合わせの僅かな量なら引当てできますが、ある一定以上にあると工場に飛び、部品調達から始めるためこの納期になります。

 顧客に
 「納期3ヶ月です」
では当然、商売になりません。

 債務超過から何とか脱した荻村は
 「フリーキャッシュを全て在庫に投資する」
という方針を打ち出し、在庫が増える度に売上げも連動して増加、キャッシュフローも潤沢化し、設立2年後には売上高3億円、在庫量8.5億円、無借金という状況を作り出していました。

 売上高を原価に戻すと、約2.4億円となります。つまり約3.5ヶ月分の在庫を保有していることになります。
 荻村は深圳の下町に借りている倉庫に行くのが楽しみでした。壮大な量の在庫は圧巻で益々の発展を予感させ、正に「血湧き肉躍る」という表現がピッタリでしょう。

 日本への支払いはブツ到着後2ヶ月、代理店や直売客からの回収はCOD(キャッシュ・オン・デリバリー~顧客への出荷前に全額入金)なので、常に「売上げ2ヶ月分-在庫増加分」の余裕がある、ということです。

 このように生産納期が3ヶ月かかる場合、約3ヶ月分の在庫を持たないと発展させられないことは身を以て体験しておりました。

 ちなみに京信では深圳総経理の荻村に与えられた決裁権限はかなり大きく、自分の責任と権限でここまでできたのです。

 次代コーポでも標準納期は3ヶ月です。
 荻村は中国赴任時、社長から
 「売上を倍にしたいな~」
と嬉しそうに語られ
 「たった倍でいいのですか?」
と半分本気で答えました。

 しばらく様子を見ていました。といいますのは前任総経理の岡田に何か提案すると
 「何てこと言うんだ!うちは京信とは違うんだ!」
と必ず反発されていたからです。

 岡田が去ってから不正対峙に狂奔したことは拙著にしたためましたが、売上げ拡大のための策も当然並行して行っておりました。

 京信深圳の際の在庫拡大策に自信もあり、それを取り入れなければ絶対に増やせない、と考えられました。
 
 その時の次代中国販社の在庫量は約1ヶ月、だから代理店が大量に在庫を抱えています。代理店にしてみれば在庫を持てば競合有利性も確保できるため、在庫投資もまたうまみがある、と言えるでしょう。
 しかし新規代理店契約を結んだとしても、いきなり大量在庫は持てませんので、せっかく開拓した顧客も既存代理店に奪われる、という構図で新陳代謝が進みません。

 岡田は営業員の目標項目に
 「新規代理店開拓*軒」
と入れておりましたが、
 「次代のビジネスモデルでは新規代理店は育たない」
という矛盾が存在するのです。

 営業員も分かっていることですが、目標達成したいため
 (成功するはずがない)
と確信しながらも新規代理店を作っては解約、作っては解約、を繰り返すに過ぎません。

 これも取って付けたような目標設定のため組織効率を悪くしているよい事例です。

 更に代理店に大量在庫を持たせることにより自社のキャッシュフローは目前では改善しますが、代理店にはしごを外されたらどうするのでしょうか?
 また、代理店は絶対に売れる物しか在庫しませんので、既に次代コーポが高シェアを握っている製品しか発注してきません。隙間の製品とか新製品など売れるか分からないものは発注してきませんので、新たな製品を立ち上げることができない、という矛盾もあります。

 荻村は信念として
 「代理店にはしごを外されても大丈夫なように」
と常に考えを巡らせていました。

 今回最も言いたいことは、次代中国販社を引き継いでから在庫発注したときのことです。
 そのとき次代中国販社は留保利益が約1億円しかありませんでした。過去親会社に配当金を払った形跡もなく、
 「不正による利益抜かれ、怠惰な勤務態度など横行する組織で儲かるはずもないか」
と荻村は妙に納得しました。
 荻村が欲しい在庫量は揃えられませんが、売上・利益を拡大しながら漸進的に増やしていこう、と決心し初回の発注を数千万円します。

 するとです。信じられないことに日本の物流を統括している責任者が発注をキャンセルしていたのです。
 その理由は日本物流責任者の目標に
 「各拠点の在庫月数」
が設定されており、それを超えると本人の評価が下がるからです。

 「勝手にキャンセルするな!越権行為だ!」
 「上海の物流責任者ケイトには連絡しておいた」
 「こんな重要なことは俺の了解を取ってからにしろ!お陰で機会損失したじゃないか?」
 「不良在庫がかさみ損する可能性もあるではないか?」
 「そんなことお前の知ったことではない!」
 「私の評価も下がる!」

とまるで痴話喧嘩です汗泣

 上海物流責任者ケイトが荻村に知らせなかったのは
 「次代上海の納期トラブルでケイトが儲かる」
という「風が吹くと桶屋が儲かる」三段論法の仕組みが出来上がっているからです。これも不正なのですが別の機会にゆっくり説明いたします。

 話を戻します。
 「日本物流責任者の評価指標に『海外拠点の在庫月数低減』」
 「工場生産納期は『3ヶ月』」
 「上海販社の在庫月数は『現状1ヶ月』」
 「社長から『中国の売上げ2倍』」

 この矛盾は子どもでも分かるのではないでしょうか?
 代理店への在庫を増加させない限り売上げ拡大できないのです。

 人事部か経営層の仕事です。
 目標連鎖といいますが、その目標設定が本当に会社のためになっているか?ビジョン達成を阻害していないか?点検するべきです。

 「おかしい」と気づいていても前回のコンタクトセンタ事例で荻村が自身の目標達成を捨てたように「正しいことをする」人は極めて少ないのが現状です。

 次回、もうひとつ制度的な矛盾事例をお伝えする予定です。

再見!

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