自分の評価が低いと噛みついてくる社員
一般的な企業は「目標による管理(俗にMBO~Management By Objectives)」制度を導入し、半年か一年タームで回していると思います。まず自己評価、その後直属の上司、最終考課決定者、という順序です。この評価で昇給・昇格・賞与などが決まる企業も多いことでしょう。
売上高や利益額など、客観的なデータで現れる項目は誰が評価しても同じようになるのですが、主観的な目標項目の場合、こちらでは全てS(スペシャル)の自己評価を付けてくる人も多いのです。
2016年3月末、つまり日本の会計年度でいう2015年度の最終評価は荻村の前任総経理であった岡田が担当しました。
「荻村君、この評価が一年の行事で一番嫌なんだよ」
「何故ですか?」
「直属の部長さんクラスに総合評価でA未満を付けると、部屋に乗り込んできて『何故Sじゃないんですか!?最悪でもAだ!』と延々と主張するんだよ」~直属の部長クラスは大概英語か日本語ができるので直接交渉に乗り込むのです。
「嫌なら辞めろ、でいいじゃないですか?」
「荻村君、何てことを言うんだ!ここは京信とは違うんだ!辞められたら困るじゃないか!」
「……(全然困らないと思いますがね)。で、どう対応してるのですか?」
「結局、押し切られてA以上を付けさせられるんだよ」
「……(そんなことだからつけあがるんですよ。大体それでは公平な評価でなく、この制度を運営する意味がありませんよ)」
荻村はあっけにとられました。空いた口が塞がりません。人事考課の教育を受けていないのか?本社がしてこなかったのか?最悪な管理者だ、と心底思いました。
2017年3月末、つまり2016年度の最終評価は荻村が行います。上海営業部長の徐には前年度「A」から「B+」を通り越して「B±」にしてやりました。京信では二段階以上変化すると人事への説明が必要になる規則がありましたが、次代人事制度にそのようなものはなく楽でした。しかし予想通り早速徐が総経理室に乗り込んできて日本語で騒ぎます。
「何故私がB±なんですかっ!ずっとSかAだったんですよっ!」
「それは岡田さんが評価制度の本質を理解していないからだと思う。B±は部長としての役割期待を達成している、ということだ。部長としてAなら期待以上で、すぐにでも副総経理に推薦できるし、Sなら総経理をやってもらいたいというレベルだ」
「……。期待通りにやっていると評価されているのですね?」
「(してねーよ。来年まだいたらCかDにしてやるよ) そうだよ」
荻村は徐の行動とトークは見抜いておりましたので、既に予行演習済みのことでした。
徐はそれ以上、荻村説得のトークは思いつかなかったのでしょう。「クソ」というような顔をして出て行きました。その時から徐は「岡田と違う。俺を評価していないのではないか?疑われているか?」と感じるようになったと思われます。
ここでは日本語のように相手のネガティブ・フェイスを気にしての婉曲表現ではつけ込まれてしまいます。あまり複雑な言葉での交渉もできませんので、ズバリと断る、つけいる隙を与えない明確な表現をする、こういう交渉ストラテジーが有効です。
余談ですが、岡田が部長クラスにAやSを付けてきたとすると組織としてひずみが出てきます。昇給原資総額は年度成績により定められます。給与の高い部長級の昇給率が高ければ、その分、多くの低水準給与社員の昇給額を押さえ穴埋めしなければなりません。高額所得者の給与がどんどん伸び、低所得者が伸びない、という構図になり弱い立場だけど頑張っている社員のフラストレーションが溜まり組織不活性化につながります。管理者は組織を活性化させなければならない使命を有しているはずです。
皆さんの企業では公正な評価がなされているでしょうか?
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