上海不正事件Ⅰ「胡商店」 チャート図説明

 今回から挨拶抜きで書き始めますことご了承ください。

 拙著にしたためました不正事件は結構複雑で、文章だけだと判りづらいと思われます。今回はチャート図に従って説明していきます。

 尚、このチャート図は今年5月に行われた上海華鐘コンサルティングのセミナーでの不正事例紹介のため提供してものです。事例報告②内部統制制度の構築(能瀬徹講師)パートで説明されており、現時点で録画・資料とも視聴可能です。

華鐘コンサルタントグループ (shcs.com.cn)


 次代コーポレーションは香港代理店だったエバー社を吸収合併することで中華圏へ本格参入しましたが、エバー社上海販社の一営業員だった胡という人材も移籍してきました。言い方は悪いですがエバー社は一零細商社で知名度はないため採用している社員の学歴は高くありません。彼らは学歴社会の中国において自身の実力で稼いでいくのは容易ではありません。

 胡は2012年頃上海営業部マネージャーとして入社した徐の権力を取り込もうと接待攻勢に出たようです。徐はオーストラリアと日本への留学経験があり英語と日本語が堪能です。中国ではいわばエリート候補でもあります。徐も最初のうちは真面目に製品勉強や市場開拓活動をしていた、と古参社員は語っていました。しかし一度甘い汁を吸うと……

 徐の入社一年後から胡や徐により代理店への蛮行が始まったようです。中国人通しでも信用し合うには一年かかると言われています。商談決着の理由として中国人はしばしば「関係」と言います。この意味は「一蓮托生の仲」になったかどうかを表していると主人公はある時期から確信するようになりました。要するに不正な利益を享受し、他には絶対にばらさない仲、ということです。キャッシュバックとかアンダーザテーブルとかは業務上横領、背任行為、贈収賄ということは分かっているからです。

 このブログで京信の偽物を販売した事例として紹介した福建省代理店FF社総経理も「関係(信用)」を築くために「吃饭,喝酒,唱歌,吃饭,喝酒,唱歌… で金がかかる」、つまり「食事、酒、カラオケの連続接待で金がかかってしょうがない」とこぼしておりました。

 前置きが長くなりましたが、胡と徐の不正をチャートに沿って説明いたします。

 まず胡は担当する代理店に特別価格を優先的に出してやる見返りとしてキャッシュバックを要求する、という最も単純なやり方をします。断られたら特別価格を出さない、あるいは既に提供済の特別価格を取り消しキャッシュバックを提供してくれる代理店に付け替える、こういうやり方です。

 胡は一般職、つまりヒラの営業社員なので特別価格決裁権限はありません。そこで徐の力が必要です。英語も日本語も堪能でエリートかつ真面目幹部社員を装い、荻村前任の岡田にうまいこと説明をします。ある一定レベルの特別価格決裁者はもマーケティング部長のモーリスですが、レベルが厳しくなると岡田の決裁となります。何よりも中国は権力社会なので岡田がオッケーと言えば全てよきにはからえ、ということになります。

 そして巧妙かつ悪どい手法はチャートの赤点線で記した流れです。

 胡は自分自身で出資し経営する胡商店という会社を持っています。もう一人の株主は恐らく父親です。実質の運営は胡一人です。胡や徐は一蓮托生になれる商社を見つけ次代コーポの代理店になるように働きかけます。しかしこの商社は同業界の製品を扱ったことはありません。単なる中抜き専用のトンネル会社です。拙著ではそれを嘉興代理店としました。浙江省のある市の地名で大手日系企業が進出しグループ会社の工場が十数個建ち並ぶ平湖の高速鉄道最寄駅が嘉興です。

 そして凶悪なのは嘉興代理店の次代コーポ製品販売先は全て胡商店なのです。特別価格(チャート図の手口①)は臨海電子向けなどとなっていますが、臨海電子には胡商店経由で販売しているのです。つまり嘉興代理店から次代コーポ製品を胡商店で買い戻す(チャート図の手口②)、ということです。更には自分の担当する代理店へ「胡商店から買え」と指示するのです(チャート図の手口③)。流通業者二社分のマージンをわざわざ次代コーポが支払っている、という図式です。したがって市場価格と比較して次代コーポの販売価格は非常に低い、という構図です。次代コーポの営業利益率は平均して1%もない状態でしたが、当たり前というものです。

 更に徐は上海営業部長として華東エリアの顧客情報・商談情報を全て閲覧する権限があります。嘉興代理店に提供している特別価格品を転売できる顧客を探すことができます。徐がそれを狙ってPC端末を覗いている時の顔は、それはもう極悪者の目つきです。そしてターゲットを発見すると事務所から出て行きます。外で胡に電話をし「この顧客へこの製品を**元で見積もれ」と命じているのです。ちなみに拙著に書きましたが、胡は営業会議のある毎週月曜日午前中だけは次代の事務所に出社しますが、会議終了後外出し次の月曜日まで戻ってきません。直行直帰で顧客開拓をしていると言います。実は胡商店として横取り活動に明け暮れていたのです。

 理解していただけたでしょうか?
 ここで中国ビジネス関係者のためにまとめておきましょう。胡商店事件以外で気づくことも挙げておきます。
 1)PC端末を悪意ありそうな目つきでマジマジ見ていたら、不正を模索していることを疑いましょう。
 2)席を外ししばらく帰ってこなかったら、一蓮托生の仲間への指示や情報交換していることを疑いましょう。
 3)社員や応募者が会社を登記していないか?必ずチェックしましょう。そして兼業禁止規定を就業規則に謳いましょう。
 4)営業活動などでの外出はどこへ行きどのような商談をしたのか?詳細チェックをしましょう。時にはその顧客へ直接確認しましょう。
 5)サンプル要求があった際、顧客の受け取りサイン管理をしましょう。

 総経理や管理者の方が自ら動くことが必要です。現地社員へ命じるだけではダメですよ、という意味です。

 多謝

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