迷宮入りの話 「俺よりスイカの命」

  みなさん、こんにちは。はやぶさひろです。

 今回は原稿から削除した部分をそのまま掲載します。この内容は結構気に入っていたのですが、ハラハラ読み進めている読者がずっこけるといけないので、という理由でカットすることになりました。ちょうど上海の魑魅魍魎と闘っていて精神安定剤を飲みながら、という描写のところですね。安定剤服用は怒りやイライラを押さえる目的もありましたが、報復が恐かったというのが正直な気持ちでした。


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荻村は、通勤時間帯大量に人が待っている横断報道の信号で、偶然を装いヒットマンに後ろから押されることが怖かった。なぜなら疑似体験をしていたからだ。

ある夕方、会社から出て歩道を歩いていると、突然背中に背負っているバックパックを捕まれ後ろに放り投げられた感覚に見舞われた。まるでターミネータに襲われたように力が強く、全く防御もできない状況で、吹っ飛ばされながらアスファルトの地面が近づいてくるのが分かった。

(やられた! ヒットマンだ! 頭蓋骨がぱっかり割れる! 即死か、それとも植物人間か?) 

 ハッと気づくと仰向けで倒れており、バックパックが何かに挟まって立ち上がれない状態だった。

(気を失っていたのはどのくらいだろう)

実際は数秒だったが、荻村には死の淵からの生還に等しい永遠にも等しい時間だった。

バックパックを外し何とか立ち上がると、自分の下には電動バイクが横転している。

(ケータリングで運んでいるお兄さんのだ)

電動バイクのハンドルが荻村のバックパックの取っ手に入り込み、バイクを巻き込むように背中から横転したように見えた。荻村はバイクの上に背中から倒れ、しかもいつもパンパンにふくれたバックを背負っていたため、激しい転倒でも頭を地面に打ち付けることは回避できたのだ。ただし腰骨はかなりのダメージを受け、内出血も相当なものだった。

 人だかりができたが、助けてくれる人は誰もいない。

(これが中国だ)

親切心で病人や怪我人を助け、病院に連れて行ったとしよう。金がなければ治療してくれないので、連れて行った人が支払わせられるかもしれない。それどころか、怪我人が助けてくれた人を指し「この人に殴られた」ということもあるようなのだ。

 辛くも立ち上がった荻村に、ぼそりと教えてくれる男がいた。

「おい、バイクのあいつ、お前より先にスイカを救出していたぞ!」

 思わず若者の方を見ると、確かに木箱に入ったスイカを大事そうに抱えている。お遣いもののスイカでも運んでいたのだろうか?

(俺はスイカ以下か? 知らんでもいいようなことを俺に教えやがって! 余計に怒りがでてきたじゃないか!)

荻村は抑えきれずに叫んだ。

 「そのスイカ、賠償として俺によこせ!」

バイクの若者はスイカをよりきつく抱きしめ答えた。

 「不行(ダメだ)!」

 荻村はその場で顔やナンバープレートの写真を撮り、名前や携帯番号を聞いて別れた。自賠責保険に入っているはずもなく、貯蓄もあるはずがなく、それ以上のことを期待して時間をかける必要はない、ということを、荻村は長年の経験の中で悟っていた。

(今回は事故だった。でも、もしこれが……)

 昨今の中国都市部はシンガポールのように監視カメラがあちこちに設置され、スマホで個人や位置データもリアルタイムで管理されるようになったので、おちおちとヒットマンを雇うこともできないかもしれない。だが荻村は、念のため朝と夕方のラッシュ時間は避けて出退勤した。

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 バックパックの取っ手にどのように電動バイクのハンドルが突っ込んだのか?不思議に思われたかもしれません。荻村が愛用していたバッグはMANHATTAN PASSAGEの3WAYというトート、ショルダー、バックパックの三種類の使い方ができるものです。ちょうど下の写真のようにトート用の取っ手が身体から外に出ており、ここに秩序なき運転社会の電動バイクのハンドルが突き刺さったようです。場所は歩道です。予定時間に遅れたり商品をダメにすると騎手(運転手)にペナルティが課せられます。

 運賃が安いのでケータリングが発達しているのです。朝マック一個からデリバリしてもらう社会になりました。昼食時になると12時前から皆、事務所を出てビルの一階まで受取りに行くのが普通です。

 

写真を拝借したURL(ユニクロ)

https://www.uniqlo.com/jp/ja/stylingbook/30012878?utm_medium=email&utm_source=uq_html&utm_term=uh_220807all_m&utm_content=106


 日本人ビジネスマンは昔から決まって猫も杓子もTUMIのバッグを抱えております。中国でTUMIのバッグを持っていたらまず間違いなく日本人ビジネスマンです。荻村は他の模倣をするのが嫌いな性格なので、このMANHATTAN PASSAGEの撥水性バックパックを愛用し、これが三つ目でした。いつもパンパンにふくれていたのは出張があまりにも多く、忘れ物があるといけないため着替え以外は全てこのバッグに収納していたからです。お陰で命拾いしました。

 2wayか3wayのバッグをお持ちの方、バックパックとしてお使いの時はトート用の取っ手はホックでくくっておくことを強く推奨いたします。特に中国では。


 次回も迷宮入りの話を掲載予定です。下次見!

 



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